ぐうぜんのきろく

好きな音楽とひとの話

ジャグリングをよく知らない人が『秘密基地 vol.10』に行ったら。

 

Juggling Unit ピントクル主催
秘密基地 vol.10』に行ってきました。

 

いつもはジャグリングライブ行っても、すごいなー、とか、よくわかんなかったなー、という平坦な気持ちで帰ることが多いのですが、今回はなんだかすごく満たされたような気持ちがありました。ハマる人、ハマらない人、いたのですが、比較的多めにハマってしまったので、それが大きいのかもしれません。私自身ジャグリングに詳しいわけでも、やったことがあるわけでもないので、全然よく知らないのですが、最近、「ジャグリングって何なんだろう」、みたいなことを考えるのが面白くてなりません。

 

この公演に行ってみた理由としては、フライヤーが綺麗だったから、ということが一番大きいのですが、以前空転軌道のメンバーとして見たことがある鈴木仁さんと稲葉悠介さん、空転劇場で見た山村佑理さんの名前を見つけたので、行ってみることにしました。

 

秘密基地 vol.10

  1. 山村佑理「REACTION RINGS」
  2. 田中謙伍「いっせい皿のいっせいの部分」
  3. 鈴木仁「残陽」
  4. focus「対岸の人魚」
  5. Room Kids & パ技ラボ「Magnetic Sea (short)」
  6. 福井裕孝/岩田里都「otomodama」
  7. aube「走れ!工藤くん」夢が踊るver.
  8. 中西みみず/染谷樹「404 Not Found

 

そのうち、いくつかの感想を。

 

  • 「走れ!工藤くん」夢が踊るver.

急展開の演劇って夢の中みたいで好きなんですが、まさしく、といった感じで非常にハマった。秘密基地用に短く作ってきたようなので、急展開さが増しているらしく、それもハマった理由かもしれない。空転軌道で稲葉さんを見たときに、多分、この場所はこの人の主戦場じゃないんだろうなと思ったが、こんなことをやっていたとは。やっぱり何かあった。ジャグリングやりながら演劇、意味わからなすぎて笑ったけど、最後にはなんだか溶け込んでいて、ちょっと涙も誘った。当たり前じゃないことを、素直に納得させる演出がとてもよかった。シガーボックスのシーンがやけに壮大で、馬鹿馬鹿しくて、くそほど面白かった。メインの後ろでジャグリングを急に始めたり、ステージの端っこで凄い技決めてたり、メインにもなりうるジャグリングが、ただの手段として使われてるのが面白かった。オープニングとエンディングが最高に良かった。

 

  • 「いっせい皿のいっせいの部分」

めっちゃ可愛い。いっせいの部分可愛い。まるい道具が好きなので、まるが生まれたり消えたり、角が生まれたり幾何学的になったり、半円が飛んだり開いたり、なんだかぞくぞくした。理系的、図形的で、非常にわたしのツボだった。想像できない形が生まれるのが面白い。磁石で生きてるみたいに動くのも面白い。少しNHK教育みがあった。これ以上に、もっと面白いことできそうな可能性を感じた。あと、それを操っている方が、愛らしい顔をした眼鏡っていうのが勝ちだった。全面降伏した。

 

  • 「Magnetic Sea (short)」

ビデオからテープを引き出して、引き出して、引き出して。ぐるぐるになって、テープの海に入る。照明が反射するテープの美しさ。誰かの大切な記録を、引き出して絡ませてぐちゃぐちゃにする美しさ。それを踏みしめる。破壊と、創造。単純にそれやりたいと思った。ちょっとテープを引き出すだけで親に怒られた自分の子供時代を想い、照明でキラキラと輝くテープが、より一層キラキラして見えたりした。まるく巻かれたところから、さらさらと、はらはらと、すらすらと解けていくテープが素敵だった。集められたテープに演者の息がかかり、キラキラ輝き、ざわざわとした音が鳴った。とってもいい音だなと思った。

これもジャグリングなのかと、わたしの中のジャグリングというものが、解かれて集められたテープのように、わっと広がっていった。

 

  • 「REACTION RINGS」

山村さんが演技後のトークで、"人が何か失敗をしたとき、その人の本質が垣間見えるから好き"、という感じのことを言っていた。"だから人のそうゆうところをよく見ちゃう"、と。自分の演技も失敗を前提として組むために、ギリギリできるかも、というラインに設定してるらしい。最近、ミスに対してポジティブに接するパフォーマーの話をよく聞く気がする。ジャグリングにおいて道具を落とす、というのがミスになるわけだが、そこから何かを生み出そうとしている人がいる。そして、また同じことを繰り返すことで、何かを生み出そうとしてる人がいる。ジャグリングの歴史はよく知らないけど、このシーンはとても面白いと思う。同じことを繰り返していると、視点が広がっていって、様々な事が気になってくる。山村さん、強面だと思っていたが、意外と愛らしくて優しい顔をしている。

ふと今まで観た事のあるジャグラーのことを考えると、初めて見た時の印象は、この人怖そう、である事が多い。今でも大体のジャグラーを怖いと思ってるし、こういった舞台だと演技中に喋らないからより一層の怖さがあるし、なんならこのライブだって震えながら行った。ただひとり、山村さんだけ、演技を見ているだけで、いつもジャグラーに抱く怖いという印象が次第に薄れていった。なんだか漠然と、良い人なんだろうなと思った。

 

  • 「残陽」

もうめちゃめちゃ怖かったんですけど。もう。この公演、殆ど仁さんを目当てに来たようなもので、少しは知っている人だから、と思っていたが、全然知らない仁さんがそこに立っていた。ずば抜けてプロフェッショナルなオーラを感じた。いやほんと怖かった。芸に意識が飲み込まれそうになったの初めて。剣飲む人を初めて見たので、それも怖い理由ではあったんですが、それをひとまず置いといても、演技というか構成というか、目線というか姿勢というか、この人死ぬんじゃないかと思った。舞台上が、客席が、ねっとりとした闇に覆われていた。震えた。そして多分、最後に死んだ。

誰かがツイートした写真で見た、どこかの遊園地で黄色いツナギとマントを着ていたポップな仁さんはなんだったんだ。観に行ってないからよくわからないけど、なんだか緩急ありすぎて魅力が止まらない。とっても気になってきた。舞台メイクすごい良かった。かっこよかった。時々、若かりし日の森山未來に見えた。かっこよかった。

 

  • 総括

めちゃめちゃ興味深くて、とても面白いライブだった。公式ホームページをよく見たら、ジャグリングの実験場と書いてあった。そうか、実験か。私は実験の場が好きなんだろうな。先日、谷口界さん企画の、「現代サーカスの実験場」に行った時も、今回と同じような満足感があった。パフォーマーの実験を見、それについてのトークを聞く時間が今一番楽しい。パフォーマーの、パフォーマンス論のような話を聞くのが本当に面白い。

 

あれ、もしかして、ジャグリングの世界って、私が思ってた以上に、めちゃめちゃ面白いんじゃないか?

 

もしそうゆうの好きなら、このライブ行くといいよ、とか、この人見ると良いよ、とかあったら後でこっそり教えてください。

 

あまりにも興奮した時間だったので、思いもよらず長文になってしまった。もしここまで読んでいただいた稀有な方がいたのならば、ありがとうございました。