ぐうぜんのきろく

好きな音楽とひとの話

千葉でやっていた『ギアイースト』という舞台の話。

 

『ギアイースト』

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2017年12月から2019年の9月まで、千葉ポートシアターで『ギアイースト』という舞台がロングラン公演を続けていた。正式表記は、おそらく、『ギア-GEAR-』East version。

京都で話題沸騰中の『ギア-GEAR-』が、ついに関東上陸!と始まった『ギアイースト』。京都では最近、3000回公演を突破したらしい。凄まじい。

詳しく知りたい方はギア-GEAR-公式HPへ。

 

私がこの舞台を知ったのは、2018年のうつのみや大道芸フェスティバル。出演の紙磨呂さんが「でんぱ組の子が…」みたいなことを言ってた気がして、急にアイドルの話してなんだろうな、と気になって調べたら『ギアイースト』という舞台を見つけた。いつも白塗りの紙磨呂さんが素顔で出演してるらしい。すぐ出演回のチケットを取った。

 

初めて向かった日、初めて降り立つ地。ひとりで来た千葉ポートタウン。週末なのに極端に人がいない。この近くに住んでいる友人に写真を送り、画面上で笑い合った。

劇場のある建物に入り、謎のレトロカー展示を尻目に、階段で2階へ。寄せ書きが集まる壁を見ながら時間を潰し、フォトスポットを背景に自撮りし、エレベーターで劇場へ。エレベーターの扉が開いた瞬間から、雰囲気のある景色が広がっていた。1歩目からワクワクが止まらなかった。ローソンで発券したチケットを提示し、アンケートボードを受け取り、目の前のグッズ売り場のレジにいるスタッフさんに会釈し、角を曲がる。劇場入口の右側にキャストボードが掛けてある。とりあえず記録として写真を撮る。

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劇場に入り、目の前に広がるギアの世界。こんな素敵で、作り込まれたセットがある舞台見たことない。指定の席に座り、ドキドキしながら待つ。開演前のアナウンスにクスッと笑いながら、そして感心しながら、iPhoneの電源を切り、ゴーグルを受け取り、開演。暗くなり、目の前にプロジェクションマッピングが広がる。そして、ロボロイドたちの1日が始まる。

ここからの詳しい説明は避けるが、リーダーながら臆病な赤ロボ(マイム)、ひたすら元気な黄ロボ(ブレイク)、クールな青ロボ(マジック)、ちょっと抜けてる緑ロボ(ジャグリング)と、急に現れた天真爛漫なドールの、それぞれの性格や特技が交わりながらストーリーが進んでいく。キャストはそれぞれのパートに3〜5人ほどいて、毎回組み合わせが違う。

 

私はノンバーバルパフォーマンスに慣れていなかったのと、設定を飲み込むまで少し時間がかかったので、初回の観劇はそれで精一杯だった。なので、あまり深く見ることができず、それほど豊かな感想は抱かず、こんなもんかと劇場を後にした。ただひとつ覚えていたのは、演出の一部で私と握手してくれた、CONROという人がめっちゃかっこよかったということだった。私よりも前にギアイーストを見たことがある友人に、そうLINEを打った。


そこから時は過ぎ、2018年のソラマチ大道芸フェスティバルに行った。当時の数少ない推しを友達と一緒に観て、締めのフィナーレを見ている時に、あるパフォーマーに目が止まった。それがCONROさんだった。しまったノーマークだった、観に行けばよかったと悔やみながら、サインをもらいに行った。

私「あの、ギアに出てた人ですよね?」

CONROさん「ギアに出て"る"人ですね」

私の中でギアイーストはあの日で終わっていたが、まだ続いていることに気付かされた。後からなんかずっと申し訳なくて、この会話は一生覚えていると思う。

それよりも数時間前に、緑ロボの森田さんを見かけて友人に、「多分ギアイーストの赤ロボの人」って言ったのも覚えているし、かっこいいお兄さんがいるなぁと思ったその人が、京都ギアの緑ロボの酒田さんだったことを、後から思い出したときにハッと気付き、無知ってすごいなぁと笑ったのである。昔の私、いいなぁ、その状況。

あと、数年前の上野恩賜公園の五條天神前でたまたま見た、トークの自虐がすごくて、しこたま笑わされて、リングを沢山投げて、私がなかなか名前を覚えられなかったお兄さんが、ギアイーストに出てることもここで知った。私が大道芸というものを好きになる前に、足を止めて見た最初で最後の大道芸人。キャストプロフィールは見ていたけど、メイクがかっこよくてわからなかった。大道芸面白かったし、次はこの人見に行ってみよう、とまたギアイーストのチケットを取った。


また来てしまった、と自分の行動力を恨みながら、なんやかんやウキウキして観た2回目。

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びっくりした。まるで違う作品かのように輝いて見えた。2回目だったので、私が設定を完全に飲み込んでいたことが大きいと思うが、ロボやドールの行動に意味があって、その意味を考えながら観ていたら、容易に感情移入ができた。終盤で、青ロボYOURIさんの弾ける笑顔を見るだけで、辛くなった。緑ロボ小林さんの操る光るリングが、綺麗な弧を描くだけで涙が滲んだ。あまりにも綺麗だった。

ドールのラストシーンでは震えながら泣いた。


この日から私のギアイースト通いが始まった。それぞれ同じパートでもやることが違うことに気付いた私は、全てのキャストを見る!と、意気込んで回数を重ねた。ひとりでも、友人と一緒にも行った。千葉駅までの長い帰り道、友人と歩きながら推しロボのかっこよさや、素晴らしさを話す時間が好きだった。メインの後ろでひっそりと面白いことをしている推しのことを話したりした。

そのうち、京都ギアも気になって足を運んだ。色々と圧倒された。何もかもが素晴らしすぎた。でも私はイーストが好きなんだよな、と、その度に思ったりもした。京都とイースト、同じ作品だけど、違う何かが息づいていた。京都では初めて推しのドールができた。


ギアイーストに行った回数が30を超えた頃、メンテナンスのお知らせがあった。千葉公演としてはもう終わり。そろそろ終わるんじゃないか、と、ずっと頭のどこかで心配してはいたが、考えないようにしていた。ついに現実になってしまった。それからは、大好きなロボのメンテナンス前最後の見納め、といいながら沢山通った。大好きなロボの最後の姿は、みんな震えるほどかっこよかった。絶対にまた会いたいと思った。また会うと決めた。

 

ギアイーストがメンテナンスに入ってから、京都ギアとの向き合い方を考えていた。ギアの劇場で撮った写真を見るのもつらくて、行くなんて考えられなかった。Twitterで京都キャストのフォローを減らした。同じ時間軸にあるのに片方は動いていて、片方は今動いていないなんて。でも、やっとメンテナンスさえもいい思い出にできたので、そもそも再開するって信じてるし、というか再開するし、そろそろ行ってみようかなと思っている。

 

早くギアイーストのメンテナンスが開けてほしい。この記事を書いてるときに、懐かしくなってギアイーストの公式HPを見ようとしたら、こちらもメンテナンスをしていた。寂しい。メンテナンスに入ってから、それに向き合うまでにひと月半かかり、やっとここに書くことで昇華しようとしたのに。次があるとしたらどこに劇場ができるだろうか、とか、もしまた新キャストが増えるとしたら誰が増えるかな、とか、あの人が入るなら赤ロボと青ロボどっちかな、とか、そんな由無し事を考えながら、ギアイーストが公演を止めている寂しさを埋めるしかない。

 

そして、ドールのラストシーンのように、私たちは、ギアイーストの再開を祈ることしかできないのだ。