ぐうぜんのきろく

好きな音楽とひとの話

星野源はファンを出し抜く。

 

星野源の話を書かなければならないと思った。

 

好きになってもう6年くらいになる。大学在学中から今まで私を支えてくれているのは、親や友人はもちろんだが、星野源の存在が大きい。

 

星野源が書く歌詞は、誰もひとりにしない。『過保護のカホコ』の主題歌にもなった『Family Song』はよくわかる例で、歌詞中に"あなた"という代名詞が入っているが、それが恋人なのか、同性なのか、異性なのか、子供なのか、親なのか、はたまたペットなのか、モノなのか。聞いている人の大切な家族である"あなた"は、三者三様、それぞれの形がある。それぞれの形があるのに、この曲はどんな形の家族にもそっと寄り添う。それなのに歌詞は抽象的な表現ばかりではなく、しっかりと現実味がある。大切な誰か、何かを思う、その気持ちはみんな共通してることを、気付かせてくれる。

『Family Song』はすべての愛を許容する。

星野源はすべての愛を許容し、聴いてる人を、誰もひとりにはしない。

 

私が救われてきた曲をいくつか紹介したいと思う。

 

  • 『日常』2011

"みんなが嫌うものが好きでもそれでもいいのよ

みんなが好きなものが好きでもそれでもいいのよ

共感はいらない

一つだけ大好きなものがあればそれだけで"

この曲を聴くたびに、この歌詞を聴くたびに、色々な日常生活の鬱積がパッと晴れる。"共感はいらない"と切り捨てているところが、潔くて良い。現代のSNS社会において、そう思えると、とても生きやすくなる。それと、私の嫌いなものでも、それを好きな人がいることを、私が好きなものでも、それを嫌いな人がいることを意識できる。それを意識するだけで、無意識に誰かを傷付けてしまうことがなくなるように思う。どんなものでも、好きなものを好きと言える世の中なんだから、積極的に好きを発信していきたいし、そうゆう世の中になってほしいなと思う。みんなの好きで溢れる世の中に。

 

  • 『フィルム』2012

"どんなことも胸が裂けるほど苦しい

夜が来ても すべて憶えているだろ

声を上げて 飛び上がるほどに嬉しい

そんな日々が これから起こるはずだろ"

フィルムは落ち込んでいるときに聴くと歌詞がすべて響いてくる。今の暗い気持ちに寄り添って、これからの明るい未来を想像させてくれる。フィルムのような目で見る世界は、人生という一つの作品であって、苦い結末でも笑って作ろうよ、という意味が込められていると考える。すべての歌詞が最高なのだが、前述のサビと、"どうせなら嘘の話をしよう"という一節が好きだ。嘘の話こそ作品は面白くなる。事実は小説よりも奇なり、という言葉があるが、私は小説のが全然奇であると思う。人生を楽しく作っていきたい。

 

  • 『夢の外へ』2012

"自分だけ見えるものと

大勢で見る世界の

どちらが嘘か選べばいい

君はどちらをゆく

僕は真ん中をゆく"

これ聴くたびなんだか笑ってしまう。前述の『フィルム』でどうせなら嘘の話をしようって言ってるのに、本人はどちらも選ばず真ん中をゆくのである。さすが星野源、ファンを出し抜く。それならば私も真ん中をゆく。この世にyes/noの正解などないことを教えてくれるし、思考が固まってる時に聴くと、急に広い考え方ができるようになったりする。明るい曲なので、気持ちも上向きになる。

すごく個人的な趣味の話をすると、ゼロコという大道芸人の演目中に、紅茶の種類を観客に選ばせる場面がある。ふたつの中からひとつを選ぶ場面で、どっちと指差さず、恐らく両方良い香りと思ったのだろう、「両方入れれば良いじゃん」、と言った子供を見たとき、こうゆう子供が世界を変えるんだろうなと思ったと同時に、前述の歌詞がふと頭を過ぎった。それでいい。それがいいんだ。

 

次に紹介する曲は年代が急に飛んで現在の最新になるが、あいだの数年間は、心に響くというよりは、ポップで漠然と楽しい、と思う曲が多かった。そのポップさで救われたと言えばまさしくそうなのだが、少し趣旨と異なるので一旦置いておく。

 

  • 『Same Thing(feat.Superorganism)』2019

"I just thought it’d be fun

"「楽しそう」って思うのも

Went through a whole lot so fuck this

「最悪だ」って落ち込むのも

They all mean the same thing, you know

どっちも同じことなんだ

We alright, change it up, do your thing"

それで大丈夫 それでいい"

この歌詞がとても好きで、何かあるたび聴いている。楽しそうって思うのも、最悪だって落ち込むのもどっちも同じこと、と言える星野源。もうなんだか最近仏のように見えてきた。悟り開いちゃってるよこれは。今までの全ての曲で伝えたかったことが、この4行で全て表現されているようにすら思う。星野源が笑いながら言う、「馬鹿じゃないの?!」は最高の褒め言葉なのである。楽しいも最悪も、全て同じことと思うと、人生うまく生きれそう、と漠然と思えてしまった。救う人類の規模が大きくなってきた星野源。この曲から全世界の人さえも救うようになるのか。いつか世界を救い、宇宙さえも救うようになるんだろうな。

 

私はだいぶ前から星野源に屈した人間なので、崇めることしかできない。だから批判してる人とか見ると凄いと思う。自分持ってて凄い。一方、私は全肯定マンなので、星野源が変われば、星野源に出し抜かれれば、自分も変わっていく。私が今どんな感じなのか、星野源の最新曲を聴くと大体わかる。都合のいい女です。

 

終わり方がわからなくなってしまった。

以上、いつか世界を救う星野源の話でした。