ぐうぜんのきろく

好きな音楽とひとの話

King Gnuの『Teenager Forever』の歌詞がとても心に響いた話。

 

最近、若い男に勧められるがまま、King Gnuを聴き始めたアラサーです。生きてきた年数で言うと、King Gnuのメンバーとほぼ同期です。

 

2020年1月15日に発売になるKing Gnuの新譜『CEREMONY』からの一曲、『Teenager Forever』の歌詞があまりにも良かったので、歌詞の意味を考え、そして私の解釈を、ここに書き残そうと思いました。

 

とはいえKing Gnuは知ったばかりなので、彼らの過去も、この曲ができた背景も知らないです。そして沢山の曲を聴き込んでる訳でもないです。その辺には言及できかねます。

 

あるのは、この曲と、私だけです。

 

Teenager Forever / King Gnu

 

他の誰かになんて

なれやしないよ

そんなのわかってるんだ

明日を信じてみたいの

微かな自分を

愛せなかったとしても

Teenager Forever

 

"他の誰かになんてなれやしない"、という歌詞を聞いて、白日の中にも似たような歌詞があることに気付いた。白日では、"朝目覚めたらどっかの誰かに / なってやしないかな / なれやしないよな"、と歌っている。作詞をしている常田さんにとって、おそらく、"誰かになることはできない"というのは、一貫して抱いてる気持ちなのではないだろうか。

子供時代、将来の夢はヒーローだったり、アイドルだったり。憧れたものは全て、"他の誰か"、だった。大人になったら、それらになれると思っていた。しかし、大人になるにつれて、なれないことに気付かされていく。誰かに憧れても、その人になることはできない。いつまでも、自分は自分のまま。

でも、その人のようになりたい、という気持ちはある。なれないのはわかってる、でも、もしかしたら、明日、なっているかもしれない。少年少女の頃憧れていた、"誰か"のようになっている時が、いつか来るかもしれない。

Teenager、中学高校時代というのは、自分の進路を考えていく時期であり、未来が希望で溢れている時期。まだ、自分は何にでもなれると思っている。大人になり現実を知って、諦めることを知ってしまった今でも、将来に夢を膨らましていた頃の気持ちを、ずっと持っていたいと願う。

他の誰かになれないが、その人のようになるには、自分を信じて進むことしかできない。自分の才能やセンス、自信が持てなくて、たとえそれらが、微かなものであると思っていたとしても、それを信じて進むことしかできない。結局は、自分を愛することしかできない。

そして軽やかで、キャッチーなメロディで歌うTeenager Forever。あくまでポップに。歌詞の中身と、明るいメロディの、その対比が、自分の中の矛盾した気持ちを表しているのではないか。

 

望んだこと全てが

叶う訳はないよ

そんなのわかってるんだ

深い傷もいずれは

瘡蓋に変わって

剥がれ落ちるだろうか

 

何かを望んでも叶わない世の中の厳しさ。それは知っている。でも、夢を追いかけたかった。大人になってからも夢を追いかけて、周りから馬鹿にされたりしてできた挫折も、心の傷も、いつか叶った時、綺麗に忘れることが、できているんだろうか。

 

いつまでも

相変わらず

つまらない話を

つまらない中に

どこまでも

幸せを探すよ

 

現実に塗れ、夢を持てないこの世はつまらない。つまらないけど、その中で生きている限り、幸せを探したい。つまらなくても、幸せはある。自分が生きてるこの世を、まだ、諦められない。

 

伝えたい想いは溢れているのに

伝え方がわからなくて

今でも言葉を探しているんだ

遠く散っていった

夢の欠片に

めくるめく貴方の煌めきに

気づけたらいいんだ

Teenager Forever

 

ここで、「貴方」という言葉をどう解釈するか悩んだ。自分のことか、聞き手のことか、はたまた第三者か。"遠く散って行った夢の欠片"ということは、夢を追いかけて散って行った先人のことか。わたしはその中の全部だと思う。夢を追いかける人、追いかけた人、夢を諦めた人の全てに。"めくるめく貴方の煌めき"、めまいがするほど魅力的な貴方が、命を燃やして残した煌めきに、気付けたらいいな。みんなが夢を追いかける世の中になってほしい。

夢を追いかける人に、まだ自信の持てない無責任な自分はなんて声をかけたらいいか、なんて伝えたらいいか今でもわからないけど、応援したい気持ちはある。

ここで"遠く散って行った夢の欠片"は、夢を諦めた人だと思っていたが、もしかしたら、昔、自分と一緒になって夢を追いかけていた人なのかな、とも思った。自分と一緒に夢を追いかけていたけど、違う夢を持ったり、夢を諦めたり、散り散りになった人たち。無理に引き留めることはできなかったけど、その人たちが違う場で、煌めいてくれていたら、いいな、と。

そして、自分も、自分自身の煌めきに気付きたい、そして進んでいきたいな、と。

 

結局のところ

誰も教えちゃくれないんだ

進むべき道なんて

等身大のままで

生きていこうぜ

歳を重ねても

 

自分がなりたいと願うものに、どうやったらなれるのか、教えてくれる人などいない。だから自分は、自分のままで、いつまでも等身大のままで生きていくしかない。

 

いつまでも

相変わらず

つまらない話を

つまらない中に

どこまでも

幸せを探すよ

煌めきを探せよ

 

つまらない世の中に、幸せを探す。そして、つまらない自分の中にある煌めきを探せ。

 

散々振り回して、振り回されて

大事なのはあなただってことに

気づけないままで

 

ここの"あなた"は、自分のことであると考える。前の歌詞に出てきた"貴方"と、ここの"あなた"は同じようで違う。散々自分のことを振り回して、いろんな人に振り回されながら夢を追いかけてきたけど、結局は一番蔑ろにして、離れてしまっていた"自分"という存在が一番大事。自分が自分のまま、等身大でいることが大事。それにみんな気付けない。それに気付いて欲しい。自分自身にも、同じように夢を追いかけている人にも。

 

一体未来は

どうなるのかなんて事より

めくるめく今という煌めきに

気づけたらいいんだ

Teenager Forever

 

未来を考えて動くより、どうなるかと悲観するより、"今"が一番煌めいているということを、気付けたらいいな。"今"が持つ大きな力を。中学高校の時に持っていた、何にでもなれると思っているような、大きな力を。そしたら、明るい未来がきっとついてくる。

 

他の誰かになんて

なれやしないよ

そんなのわかってるんだ

明日を信じてみたいの

微かな自分を

愛せなかったとしても

 

他の誰かになれないことは、わかってる。微かな自分を愛せなかったとしても、明日を信じてみたい。その待遇に、他の誰かみたいになりたい、自分を愛していきたい、という気持ちも、見えてくる。明日への悲観を歌いながら、正直には言えない、自分の夢や、明るい未来を願っている。

 

 

この曲は、現代人への応援歌のように感じた。夢を語ると、そんなことできないと笑われる世の中。そんな世の中でも、夢を持つ人はいる。実現させようとしている人がいる。そうゆう人たちを、応援したい、という気持ち。自分というものを大切にしてほしい、という気持ち。

 

私は夢を諦めた人間です。何にもなれなかった。そして、自分というものさえ、失った。自分が何をしているのか、今でもわからない。でも、友達と喋るのは楽しいし、誰かと何かをしているときは心満たされる。でも、今はそれでいいんじゃないか。私が私であるということを、そうゆう今を大事にすれば、いつか取り戻せるんじゃないか。

 

正面から向かってくる応援歌より、現実を突きつけた上で、いろんな人を認め、そっと応援してくれるこの曲のほうが、私には響く。現代人に響く。

 

だからKing Gnuは素晴らしい。あんなにイケイケのにーちゃん達がやっているバンドなのに、伝わってくるメッセージは、とても豊かで暖かく優しい。

 

自分の主観だけで、いろいろ述べてしまいましたが、もしかしたら作詞の意図は全く違うのかもしれない。でも、わたしにはそう聞こえて、そう響いたことは事実である。

 

これから自分を大事にしていきたいな、と思った。